暗号資産の急成長と隠れたリスク─“儲かる話”の裏に潜む詐欺の罠


暗号資産(仮想通貨)の市場は、ブロックチェーン技術の進化とともに急速に拡大し、個人投資家にとっても身近な存在になってきました。
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった主要銘柄に加え、さまざまなアルトコインが登場し、DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)といった新たな仕組みも話題を集めています。
しかし、このような自由度の高い仕組みにはリスクも潜んでいます。
特に問題視されているのが、「フィッシング詐欺」や「ポンジ・スキーム(出資金詐欺)」といった犯罪行為です。
正規の取引所に似せた偽のプラットフォームや、高利回りをうたう怪しい投資案件により、暗号資産をだまし取られる被害が相次いでいます。
こうした被害に遭った場合、「送金先が詐欺だった」としても、その責任の所在は必ずしも明確ではありません。
ブロックチェーンの取引は原則として取消不能(イミュータブル)であり、銀行やプラットフォームの責任が問われるケースは限定的です。
つまり、ユーザー自身が情報リテラシーを高め、自己責任の意識を持つことが重要になってきます。
本記事では、実際に起きた詐欺事例や法律上の争点を紹介しながら、暗号資産を取り巻くリスクとその対策について、解説していきます。
暗号通貨詐欺の概要|送金先は詐欺プラットフォーム「Coinegg」


ガルシア氏は2021年末から2022年初頭にかけて、以下のような一連の送金を行っています。
- Crypto.comを経由した2回のカード決済
- サンタンデール銀行支店からの7回にわたる電信送金
- 合計金額は751,500ドル(約1億1,500万円)
これらの資金は、ニューヨークのメトロポリタン・コマーシャル・バンク口座を通じて、最終的には「Coinegg」というプラットフォームへ送られました。
しかし後に、このCoineggが詐欺的なサービスだったことが判明。
ガルシア氏は資金を回収できず、銀行の対応に落ち度があったと主張しました。
ガルシア氏の主張と銀行の反論


ガルシア氏は、「銀行には詐欺の兆候を検知して介入する義務がある」と訴えました。
彼はサンタンデール銀行のウェブサイトに記載された以下のような文言を根拠にしています。
「詐欺の可能性がある取引があった場合、承認の確認のために連絡します」
しかし、裁判所はこの記載について次のように判断しました。
- この表現は顧客への連絡の可能性を示すだけで、義務を示していない
- サンタンデール銀行の契約書には「取引を拒否・防止できる」とあるが、「義務ではない」と明記されている
- ガルシア氏自身がすべての送金を承認している以上、銀行が取引を止める法的義務はない
判決のポイント|契約義務・法律違反はなし


裁判所の結論は明確でした。
- 銀行は契約や法律に違反していない
- ウェブサイトや契約書に記された文言は、法的義務を生じさせる性質ではない
- 過失による虚偽表示や不正行為も立証されていない
結果として、マサチューセッツ控訴裁判所はガルシア氏の訴えを棄却し、サンタンデール銀行側の勝訴が確定しました。
暗号資産詐欺が示すリスクと自己責任の重要性


今回の裁判は、暗号資産詐欺のリスクが個人に大きく降りかかること、そして銀行がすべての取引を監視・介入する責任は持っていないことを浮き彫りにしました。
近年、暗号通貨関連の詐欺はますます巧妙になっており、一見信頼できそうなプラットフォームですら詐欺の可能性があります。
そのため、利用者自身が情報収集し、「自己責任の原則」を強く意識する必要があるでしょう。
おわりに



暗号資産に関連するトラブルは増加の一途をたどっており、「銀行がどうにかしてくれるだろう」といった考えは通用しない時代です。
詐欺的な投資案件に巻き込まれないためにも、送金前には必ず信頼性をチェックし、少しでも不安があれば即時停止する勇気が求められます。
今後も暗号通貨投資には慎重な判断が必要です。
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